昨夜の出来事だが、書ききれなかったので、金曜日の所に付け足す。
俺は酒を分解する酵素というものを持っていない。これを改善すべく様々な訓練を積んできたが、いつも無残な結果に終わる事が多く、酒は飲めないという結論に行き着いている。集まるのは好きなんだが、酒は苦手。だから決して飲み会が嫌いというわけでも好きというわけでもない。
毎週木曜日の夜にはオールドブリッジ脇のパブで学生達が集まって飲んでいる。もちろん金曜土曜もその類の飲みはあって、住んでいるステイナン寮の一角にあるバーは毎週開いている。ルームメイトのアントニオとリカルドは酒が大好きだ。だからよく行くし、俺も誘ってくれる。
楽しい時間を皆と過ごしたいという気持ちもあるのだが、実際問題として宿題だらけでなかなか行けないという事情もある。誘ってくれるのは非常に有難いのだが、毎回断り続けていた。しかし段々語気が強まってきた。
「You should come with us!」
すまねえ、アントニオ。宿題が終わっていないのだよ。
「You have to come with us!!」
明日の授業は朝8時〜だからつらいんだよ、エレオノーラ。
「You must come with us!!!」
・・・い、行かせて頂きます、リカルドさん。
というわけで、愛車に跨ってパブを目指す。入ってみると中の熱気がすごい。顔見知りのテーブルに席を求めるが、椅子が足りないので、他のテーブルから持ってくる事にする。
「この椅子持って行っていいですかね?」
俺が話しかけた一団はノルウェー人軍団であった。椅子を頼みに来たのに、日本の事やノルウェーの事を話しているうちに、俺もそこに居座ってしまった。実はノルウェー人と飲むのはこれが最初の経験である。さらに驚いた事に彼らは海洋技術学科で、俺の履修している”有限要素#”を去年履修したとか、今履修している学生達であった事だ。有限要素法の授業は筆記体で書く先生の文字が読めなくて苦労している。
「あれを履修しちゃったかあ。ありゃきついよ。」
確かに、宿題の量がハンパない。
「あの先生の板書読めないっしょ?」
「いづれあの文字慣れるかと思いながら前に座って頑張ってるけど、全くダメだね。」
「ありゃ誰も読めないよ。暗号に等しい」
ノルウェー人でさえ、読めていなかったのか・・・
何だかちょっとホッとしてしまった。だからと言って明日から先生の文字が変わるわけでもない。また前に座って頑張ろう。とにかく同じ授業内に知り合いができたのは大きい。これからも彼とはコンタクトをとっていこう。
1時間半ほどして、留学生軍団の所へ戻るとすでに皆出来上がっていた。俺の前にビールがなみなみと注がれたでかいコップが置いてある。日本で言えば、中ジョッキと同じくらいの量だ。2/3ほど飲んだ所でギブアップ。限界です。よく頑張った、俺。明日は8時から授業があるので席を立とうとすると、
「あなたはこれを全て飲まない限り帰れません」
出た出た。
世界共通らしい。
再び口をつけるが、
ダ#〜
ビール党の皆さん、ごめんなさい。俺ビールの香りが苦手なんです。周りに勧めても飲もうとしない。埒があかないので、意を決して流し込む。
ドェ〜
なんとか全て飲み干した。
帰り道は寮まで約4キロ続く登り坂で強くペダルを踏まなくてはならない。30分後寮に到着した時、グロッキーになっていたのは言うまでもない。
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