大学へ行かねばならない。国際学生課でレセプションを受けなければいけないのだ。自分が住んでいるSteinan寮から大学までは3キロくらい離れている。寮の目の前にバス停があり、1時間に1、2本のバスを捕まえれば大学まで直行でいける。持ち前のいい加減さが出て、大学の最寄バス停がわからない。52番バスに乗ればいけるということまではわかっているので、とりあえず乗ってみる。バスは先払いで25クローネ(\438)を支払う。降りるタイミングが不安なので最前部の席に陣取った。15分くらいだろうか、大きな近代的な建物が見えてくる。目指すノルウェー工科自然科学大学らしい。バスは大学構内のグロスホーゲン南というバス停で停まった。いかにも学生らしい人が降りたので、自分もつられて降りてみる。周囲看板には
NTNU(Norges Teknisk Naturvitenskapelige Universitet)
の文字があり、正しく到着できた事がわかって安心する。
国際学生課を探さなければならないが、予め受け取っていた地図がよくわからない。とりあえずあてずっぽうで歩いてみる。広いキャンパスだ。学生数は2万人もいるらしい。トロンハイム市が15万人しかいないから、市の規模からすると相当な学生数である。古くからある建物と新しい奇抜な建物を見つつ10分程歩くと、町を見下ろす崖に来てしまった。道に迷っている。戻って違う方向へ行くと、ようやく学内キャンパスの地図を発見した。ノルウェー語で書いてあるが、スペルが英語に似ているのでなんとなくわかる。実は国際学生課のすぐそばまで来ていたようだ。
国際学生課でいま日本から来た事を告げると、すぐに2階へ通される。しばらくすると40歳くらいの女性が階段を急いで上がってきた。Dale Licataさんである。この人は国際学生課でもアメリカ、カナダ、日本、韓国担当で俺が日本にいる時からいろんな情報を送ってくれ、また助けてくれた。オスロのネットカフェで読んだ入寮日に関するEメールもDaleさんからのものであった。入学関連の資料で特に書き込むものはなく、レセプションというのは市民登録や、警#署での手続きに関する説明などだけだった。また中古自転車を扱っている店を教わった。一通りの説明が終わると、すぐにホーゲンセン先生の元へと連れ立ってくれた。俺は1年間ホーゲンセン先生の下について研究をしていく事となっている。建設学科のある建物までの間、Daleさんはいろいろ話してくれる。
「ホーゲンセン先生の奥さんは働いているの。だから・・・」
とにかくDaleの英語はメチャクチャ早い。全ての内容を理解するのは厳しかった。よって後日同じ質問をしてしまうことがあった。英語について聞いてみた。
「なぜDaleさんの英語はそんなに流暢なんですか?」
「私はアメリカ生まれ、アメリカ育ちだからよ。」
「なぜノルウェーに?」
「私は・・・(←聞き取れなかった)を勉強するためにノルウェーに来て、いつの間にノルウェーで就職して、いつの間にかノルウェーで結婚して、いつの間にか子供が2人いたのよ(笑)」
なるほどアメリカ仕込なら納得がいく。そんな話をしつつ、また途中会話を遮ってカフェや学食、などを紹介してくれた。ホーゲンセン先生の所へ到着すると先生の部屋まで連れて行ってくれた。ホーゲンセン先生は快く迎えてくれた。ホーゲンセン先生は以前、飛行#で有名なボーイング社の技術者であったのでアメリカに住んでいたらしい。だから英語が非常に流暢である。ホーゲンセン先生も俺と話す時はまだゆっくりしゃべってくれるのだが、Daleさんと話している時は速すぎて全くついていけない。しゃべる方はあまりできなくても何とかなるが、聞き取りができないのは非常にまずい。研究をする上ではコミュニケーションをたくさんとって、先生の言った事をよく理解しなければならないからだ。やばい。
挨拶もそこそこにホーゲンセン先生の所を辞して、その後もDaleさんが図書館、生協などを案内してくれる。最終的には学生証を作る事まで面倒を見てくれた。本当に親切な人であった。厚くお礼を言って大学を後にした。
これからビザの取得の為に警#署へ行く。Daleさんに教わった通りの道を進むとトロンハイム市で有名な跳ね橋(写真)へ出た。これについてはGalleryにて。話はややこしくなるが、俺はまだ1年間の滞在ビザをもらっていない。なぜこのようなシステムになっているのかわからないが、俺のビザは東京の大使館で取得する事ができず、ノルウェーに行ってから警察署に行って受け取る事になっている。そのかわり「あなたの市民権は得られました」と書かれた証明書をくれる。今日はこの証明書を携えている。
警#署に着いてimmigrationの所に行くと、人がごった返していた。待つこと1時間半ばかり。えらそうなおじさんが来て
「今日は715番まで受け付けます」
と宣言する。俺の待ち番号札は"738"番。かんべんしてくれ。でもしょうがない。明日は警#署が休みなのであさって来ることにしよう。
警#署を後にしてDaleさん教わった自転車屋に行ってみる。この自転車屋は中古自転車を扱っていると言っていた。しかし行ってみると中古自転車は全て売れ切れており、残念ながら新車だけであった。一番安いもので2500クローネ(\43750)である。この時期はノルウェー工科大学から留学生達がいなくなった後であり、(前期は6月20日でテスト期間終了)中古自転車が今後入る可能性も低そうだし、高いバス代を考えると買ってしまっても良い気がする。まあ他の店を見回ってみてから決めよう。
町の中心部には"Trondheim Torg"というショッピングモールがある。ここでスニーカーを1足買う。いま履いている革靴は疲れてしょうがない。ここで自転車屋の存在を聞いてみると、3Fにあるという。3Fのスポーツショップに行ってみると、自転車が数台置かれていた。値段を見ると2000クローネ(\35000)。バス代の事を考えると1日でも早く手に入れたほうがいい。さらにギアを見れば日本の誇るシマノ製のギヤを搭載しているではないか!思い切って買う事にする。決して安いものではないが、1時間に1、2本しかない高いバスに乗るよりかずっと便利だと思う。
お金を払って自転車に乗ってみると、実に快調である。ギアは21段のマウンテンバイクで坂の多いトロンハイムに適している。寮までは町の中心からずっと上り坂が続くが、買った嬉しさで、汗だくになっても寮までガンガンこいだ。
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