トロンハイムより150キロ南の内陸にロロスという小さな町がある。内陸にある為に冬の寒さは厳しく、毎年−30℃を記録するそうだ。
冬の厳しさだけでなく、夏でさえも激しい風が舞うような厳しい環境のロロスが発展した理由は銅の存在による。ここは鉱山の町として有名で17世紀から1977年に至るまで300年もの間採#が続けられた。現在はその採掘をしていた会社が倒産してしまった為に採掘は行われておらず、かつての活気はないが、歴史のある町並みと鉱山跡が観光名所として新たな賑わいを見せている。
中心にある教会の膝元に、古い家々が寄り添うようにして並んでいる。特筆すべきは、これらの古い家々に300年以上昔のものも含まれている事だ。なぜならノルウェーに散らばる町の多くは、今まで幾度となく大火災に苛まれており、その難から逃れ、300年もその姿をとどめている家は非常に珍しいのだ。
それ故、"One Day in the Life of Ivan Denisovich"という映画の撮影が行われ、またユネスコの世界遺産にも登録されている。
トロンハイムから日帰りで行ける位置にあるというのは非常にあり難い。そこで冬が本格的になる前に行く事にした。メンツはアダム、ニコラ、ナオさん。
トロンハイムを出る時は雨が降っていたが、バスがロロスに近づくにつれ雪に変わり、ロロスへ着くと30cmもの雪が既に積もっていた。鉱山の観光できる時間は15時からなので、まずはそれを予約すべく観光案内所に行く。案内所のおばちゃん曰く
「昨日からの大雪で鉱山が開くか分からないから、わかったら後で連絡します。」
との事なので、ナオさんに携帯番号を置いてもらって、とりあえず町の観光に出た。通りに出るとその坂の中腹に教会が見え、統一感のある町並みが広がっている。坂がある街は独特の景観を醸し出す。
俺の勝手な意見として、
坂があると、瞬時に統一感のある3次元的な町並みが視野の多くを占める為に、強い印象を与える。それに対し、歩くにつれて徐々に町並みが見える平坦な街は2次元的、かつ視野の下半分にしか対象物が現れないので、脳に訴えるものが弱い。だから同じ古い町並みが残る木曾中仙道の「平坦な奈良井宿」よりも「坂のある妻籠宿、馬籠宿」が有名になり、また、坂の多い「函館」、「長崎」などは人々に強い印象を与えるのだ思う。
その坂を歩き、教会を見た直後、観光案内所のおばちゃんから電話が入った。
「大雪で鉱山への道が通行止めになっていて、今日は閉館する」
との事。鉱山は一番の楽しみにしていただけにそのショックは大きい。これで午後3時以降にする事がなくなってしまった。
くよくよしても仕方がないので、とりあえず博物館へ行ってみる。ここで面白かったのは昔ロロスに住んでいた人々の写真で、写真の人達は明らかにノルマン人とは異なる顔つきをしている。額は広く、#の下部が横に広がっており、目は細く、脚は短い。白黒なのでよく確認できなかったが、髪も黒かったようだ。サーメ人の血だろうか?アジア人に通じるものが見て取れた。
帰りのバスの発車まで、時間が余ってしまったので、裏のボタ山でそりを楽しんだ。そりといってもトロンハイムから持ってきたわけではないので、喫茶店で借りたお盆をそりの代わりにした。
そのお盆はちゃんと返しましたよ。雪と氷まみれになっちまいまいしたがね。
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